シャルピー衝撃試験(JIS規格)の目的と方法
シャルピー衝撃試験(JIS規格)とは、材料の耐衝撃性や靭性を評価するための試験です。自動車や家電のような、衝突や落下などの強い衝撃を受ける可能性がある製品や部品の材料の評価に適用されます。衝撃試験には様々な方法がありますが、工業分野で主に行われているのがシャルピー衝撃試験です。
シャルピー衝撃試験では、振り子式のハンマーを用います。振り子の最下点に試験片を設置し、ハンマーを高い位置から振り下ろして打撃を与える試験方法です。
開始時のハンマーの持ち上げ角度と衝突後のハンマーの振り上がり位置から、試験片の吸収エネルギーを算出できます。ハンマーの振り上がり位置が低いほど、試験片が多くのエネルギーを吸収したことを意味しており、耐衝撃性が高いと言えます。
図1. シャルピー衝撃試験機概略図
図2:シャルピー衝撃試験片の詳細配置
昭和製作所では、このシャルピー衝撃試験に使用される試験片を製作しております。今回の記事では、シャルピー衝撃試験片のJIS規格や弊社の製作事例などもあわせてご紹介します。試験片の製作をお考えの方はぜひご参考になさってください。
シャルピー衝撃試験とアイゾット衝撃試験の違い
工業分野の衝撃試験といえば、アイゾット衝撃試験を思い浮かべる方もいるでしょう。シャルピー衝撃試験とアイゾット衝撃試験では、振り子式のハンマーを使用する点は共通していますが、以下の点が異なります。
- 試験片の固定方法
- ハンマーの打撃位置
試験片の両端を固定するシャルピー衝撃試験とは違い、アイゾット衝撃試験では片端のみを固定します。ハンマーの打撃位置も異なっており、シャルピー衝撃試験では、ノッチの反対側中央面に打撃を与えますが、アイゾット衝撃試験の打撃位置は試験片の端かつノッチ側です。
片端固定のアイゾット衝撃試験の方が、固定時の締付による影響が結果に現れるため、値のバラツキが大きい傾向にあります。
弊社ではアイゾット衝撃試験片の製作にも対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
シャルピー衝撃試験のJIS規格
シャルピー衝撃試験は、材料別にJIS規格でその方法などが規格化されています。
- JIS Z 2242 金属材料のシャルピー衝撃試験方法
- JIS K 7111-1 プラスチック-シャルピー衝撃特性の求め方-
- JIS K 7061 ガラス繊維強化プラスチックのシャルピー衝撃試験方法
- JIS K 7077 炭素繊維強化プラスチックのシャルピー衝撃試験方法
同じシャルピー衝撃試験でも、JIS規格によっては打撃の方向が異なる場合があります。例えばガラス繊維強化プラスチックの場合、試験片の広い面に打撃を与えるフラットワイズ衝撃と、狭い面に与えるエッジワイズ衝撃があります。試験片もまた、JIS規格によって仕様が異なります。
これらのシャルピー衝撃試験では吸収エネルギーの算出だけでなく、試験後には破面の観察も行います。破面観察により、材料の靭性や破壊様式などが考察できます。
シャルピー衝撃試験片のJIS規格
シャルピー衝撃試験片のJIS規格は、先程ご紹介したJIS規格と同じ規格にそれぞれ記載されています。
JIS規格では試験片の形状や寸法、材質などが定められています。材質によって規定されている形状・寸法が異なる点には注意が必要です。規定された形状や寸法から逸脱した場合、規格に準拠した試験とは言えません。
JIS規格で定められているシャルピー衝撃試験片の寸法や材質を、以下で紹介します。
試験片の寸法(JIS規格)と材質
シャルピー衝撃試験片のJIS規格で定められている寸法と材質は、以下の表のとおりです。
表1. JIS規格の衝撃試験片の材質と標準寸法
規格番号 | 材質 | 寸法(長さ×幅×厚さ) |
---|---|---|
JIS Z 2242 | 金属 | 55 mm×10 mm×h mm h = 10mm, 7.5 mm, 5.0 mmまたは2.5 mm |
JIS K 7111-1 | プラスチック | 80 mm×10 mm×4.0 mm |
JIS K 7061 | ガラス繊維強化プラスチック |
フラットワイズ衝撃試験片 エッジワイズ衝撃試験片 |
JIS K 7077 | 炭素繊維強化プラスチック | 80mm×10 mm×2.0 mm |
金属の場合、衝撃試験片の中心に、ノッチと呼ばれる切り欠きを加えます。
切り欠きを入れることで、切り欠き部に応力が集中し、素材の微小欠陥や試験時、振り子式ハンマーによる当たり具合のバラつきを避けることができ、安定した試験結果を得ることが可能となります。
ノッチの形状にはVノッチとUノッチの二種類があり、それぞれの寸法はJIS規格に記載されています。材質によっては、プラスチックでもノッチを加えることもあります。
下記にJIS Z 2242に規定されているVノッチ並びにUノッチの形状並びに寸法及び許容値をご紹介致します。
図3.Vノッチ形状
図4. Uノッチ形状
表2. JIS Z 2242 試験片詳細寸法及び許容値
Uノッチにつきましては、特に指定がない場合、ノッチ深さ5mm及びノッチ底半径1mmとする。
但し、当事者間の協定により、ノッチ深さ2mm及びノッチ底半径1mmとしてもよいとJIS Z 2242に規定があります。
(※ノッチ深さ2mmの場合、ノッチ下高さ8mmについては±0.05mm。)
昭和製作所では主に金属材料の切り出し〜試験片製作に対応しております。難削材(ステンレス・チタン・インコネル等)をはじめ、溶接部からの採取も可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。
昭和製作所ではシャルピー衝撃試験片を製作
昭和製作所はシャルピー衝撃試験片など、多くの種類の試験片を製作しております。材料試験片(破壊)においては、複雑な形状の部品や製品からも切り出しを可能とし、高い精度で加工する技術力を有しています。
この記事をご覧になっている方の中には、
「他社では材料の切り出しができないと断られてしまい、どこに依頼すれば良いかわからない」
「射出成形材又は押出成形での試験片製作が上手く出来ず、切削加工で対応出来るメーカーがわからない」
などのお悩みを抱えた方もいるのではないでしょうか。そのような場合でも、まずは一度弊社へご相談ください。
ここからは弊社の試験片製作の対応範囲や実績、仕上がりについてより詳しくご紹介します。
JIS規格だけでなくJIS規格外品の実績多数
昭和製作所ではこれまでご紹介してきたJIS規格だけでなく、JIS規格外の試験片の製作にも対応しております。また、シャルピー衝撃試験片においてはノッチレスでの製作も可能です。これまでに様々な形状の材料から採取し、試験片を製作してきた実績があるからこそ、安心してお任せいただけます。
ご参考に、支給材の特殊鋼からシャルピー衝撃試験片を製作した事例をご紹介します。
写真の試験片においては、黒皮の状態の素材から試験片を採取致しました。加工内容の詳細は下記でご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
高い精度・品質で仕上げます
昭和製作所では、材料の切り出しから最終検査まで自社で行います。切り出した材料はフライス・旋盤・研磨・放電加工機などで加工し、試験片を製作していきます。試験片は歪みなどが出ないように、高い精度が求められます。そうでなければ、信頼のできるデータを出すことが出来ないからです。
ご参考にシャルピー衝撃試験片の場合の事例をご紹介致します。
鉄系素材や実体からの切り出し製作を行う場合、試験片長手方向とノッチ対象面との角度、端面と隣り合う面間の角度を正確に出す為、ノッチ加工前後に平面研磨を行っております。また、ノッチ部の加工については、材質・素材硬度に応じて刃物加工、研削加工の2通りをご提案させて頂いています。
高硬度の材料の加工の際は、刃物加工ではびびり(振動)が発生してしまい、ノッチ形状が不安定になる場合があります。この場合は研削加工を行うことで、安定した精度の高い試験片を製作することが可能になります。
シャルピー試験片に限らず全ての試験片に対し各工程で検査を行い、仕上げを行ったあとに最終検査をします。ここまで徹底しているからこそ、高い品質で正確なデータを出す試験片ができるのです。
試験片のJIS規格・JIS規格外品のご依頼は昭和製作所へ
シャルピー衝撃試験片などのJIS規格の試験片、もしくはJIS規格外品のご依頼をお考えの方は、ぜひ昭和製作所へお問い合わせください。
他社では切り出しができないと言われたというお悩みをお聞きすることが多いですが、弊社ではムダなく最大数が切り出せるよう工夫しております。
長年培ってきた経験と高い技術を用いて対応させていただきますので、他社ではできないと言われた案件でもまずはお気軽にご相談ください。
昭和製作所へのご依頼・お見積りは下記よりお問い合わせいただけます。
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連絡先:03-3764-1621
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