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ねずみ鋳鉄の加工について〜特徴や主な用途、加工事例をご紹介します~

2024/4/5

ねずみ鋳鉄 FC250材

ねずみ鋳鉄の加工方法について

ねずみ鋳鉄は加工性に優れているため、機械部品や構造材料として広く用いられている素材です。昭和製作所でご依頼いただくことの多い試験片製作においても、様々な方法で加工します。
ここでは、ねずみ鋳鉄の試験片切り出し・加工に用いられる代表的な工法として、フライス加工、旋盤加工、研磨、放電加工の特徴をご説明します。

  • フライス加工:平面・曲面・溝など複雑な形状の加工が可能
  • 旋盤加工:円筒形や円錐形の加工に適している
  • 放電加工:硬い材料(難削材)の加工や複雑形状の加工が可能
  • 研磨:平面平滑度の向上。ミクロン単位での寸法制御が可能

昭和製作所では、ご依頼内容にあわせて保有加工機の一部(切断機、汎用加工機、マシニングセンタ、NC旋盤、平面研削盤、放電加工機)でねずみ鋳鉄の加工に対応しております。部品・治具の製作に関しましては、サイズや数量によって要相談となります。

加工時に気をつけていること

昭和製作所では細心の注意を払って加工を行います。特にねずみ鋳鉄は脆いため、加工時には欠けが生じないよう、最適な加工条件、加工機の選定を行います。また錆びやすいことから防錆は必須です。水溶性の切削を極力控え油性の切削を行うことや、最終仕上げ段階で錆が残らない様な工程を組み、加工を行っています。
このように考えられるリスクを考慮しながら加工を行いますので、高い品質で仕上げることができます。

またねずみ鋳鉄は切削時に出る切粉が切削液に混ざり、ヘドロ状になって加工機内部の部品に目詰まりなどを引き起こすことがあります。そのような理由から、対応する機械を制限しております。しかし制限された中でも、これまでに培ってきた技術によりお客様が求める精度を実現します。

ねずみ鋳鉄を加工して作られた試験片事例

ねずみ鋳鉄の加工における試験片の製作事例をご紹介します。

ねずみ鋳鉄 JIS8号引張試験片(FC250)

図:JIS8号引張試験片

昭和製作所では、過去にFC250を加工し、JIS8号試験片を作成した実績があります。その他にも、FC200やFC250の摩耗PINなどの製作も行っております。
詳細は下記記事を御覧ください。
鋳鉄の製作事例について詳しくはこちら

なお、昭和製作所は多品種・小ロットに対応しておりますので、もしねずみ鋳鉄以外の素材の試験片や部品が必要な場合は、ご依頼時にあわせてご相談ください。

ねずみ鋳鉄(FC)とは?

ねずみ鋳鉄は、炭素含有量が2.1〜6.7%の鉄-炭素合金で、片状黒鉛を含有する鋳鉄の一種です。炭素量が多いことから、加工時に使用する機械・工具が真っ黒になります。破断面はねずみ色であるため、この名称がつけられました。

ねずみ鋳鉄の主な成分は、鉄(Fe)と炭素(C)ですが、その他にもケイ素(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)が含まれます。

  • ケイ素 (Si):鋳造性、耐熱性の向上
  • マンガン (Mn):強度、耐摩耗性の向上
  • リン (P):流動性、加工性の向上
  • 硫黄 (S):流動性、強度を低下させる。脆性が向上する

炭素量が多いほど硬くなるように、どの成分が多いかによって、性質も変化します。
ねずみ鋳鉄の基本的な性質は以下の通りです。

  • 強度:引張強度は低いものの、圧縮強度には優れている
  • 靭性:伸びがなく脆い
  • 鋳造性:溶湯が流れやすく、複雑な形状でも鋳造しやすい
  • 切削性:切削や研削などの加工が容易
  • 耐熱性:高温(400℃~500℃)まで耐えられる
  • 減衰性:振動を吸収する性質に優れる

ねずみ鋳鉄の特性(耐摩耗性と切削加工性)と用途

ねずみ鋳鉄は片状黒鉛が潤滑剤の役割を果たしているため、摩擦係数が低く耐摩耗性に優れています。そのため、機械部品や工具などの摩耗が激しい箇所に適しています。

また、片状黒鉛は切削工具の刃先を逃がしやすく、切削屑が分断されやすいという特徴がありますので、切削性が良い材料です。鋼材と比べると切削加工が容易で、複雑な形状の部品も製作できます。

切削性に優れている一方で、加工業者によっては依頼を断られることがあります。なぜなら、ねずみ鋳鉄に含まれている黒鉛は工作機械の内部に溜まり、機械の動作や加工精度に悪影響を与えるからです。ご依頼する際には、対応可能かを予めご確認されることをおすすめします。

なお、ねずみ鋳鉄は上記のような耐摩耗性、切削性に優れることから、以下の用途に使われています。

  • 機械部品: シリンダーブロック、クランクシャフト、ベアリング、歯車、カムシャフトなど
  • 工具: 切削工具、研削工具、金型など
  • 生活用品:フライパン、鍋など

鋳鉄と鋼・鉄の違いについて

鋳鉄・鋼・鉄は炭素量によって分類されています。それぞれの炭素量と特性を下記表にまとめました。

素材 炭素量 特徴 用途
0.02%以下 極めて軟らかく、磁化されやすい 通信機器、電子部材など
0.02%~2.14% 鉄に比べて強度、硬さ、耐摩耗性に優れる 建築資材、機械部品など
鋳鉄 2.14%~6.67% 鋼よりも硬く、強度が高い。ただし脆く衝撃には弱い 機械部品、工具など

表を見ると、鉄・鋼・鋳鉄の違いがよく分かるのではないでしょうか。それぞれ、その特性が活かされる用途で使用されます。

ねずみ鋳鉄とその他の鋳鉄との違い

鋳鉄はさまざまな種類がありますが、主に下記の種類に分類されます。ここでは違いが分かりやすいように、特徴や切削性もあわせてまとめております。

種類 特徴 切削性
ねずみ鋳鉄 破断面がネズミ色で、炭素が黒鉛片状に析出した鋳鉄。最も一般的な鋳鉄で、他の鋳鉄と比べ鋳造性が高く、切削性が良い、また、耐食性と耐摩耗性に優れる。
片状黒鉛を起点に破断してしまう欠点がある
白鋳鉄 破断面が白く、炭素がセメンタイト (Fe3C) として析出した鋳鉄。非常に硬く耐摩耗性に優れるが、脆いため衝撃に弱い
まだら鋳鉄 ねずみ鋳鉄と白鋳鉄の中間的な性質を持つ鋳鉄で、破断面が白黒の斑点状に見える
高級鋳鉄 ねずみ鋳鉄よりも強度と靭性を向上させた鋳鉄。強靭鋳鉄とも呼ばれている
球状化黒鉛鋳鉄 黒鉛が球状になった鋳鉄。ねずみ鋳鉄よりも強度と靭性、加工性に優れる
可鍛鋳鉄 熱処理によって白鋳鉄に可鍛性をくわえたもの。ねずみ鋳鉄よりも強度と靭性、耐摩耗性に優れる

上記の中でもねずみ鋳鉄は汎用性が高く、さまざまな用途で使用されています。ただし、場合によっては要求される性能に応じて適切な鋳鉄を選択する必要があります。例えば、高い強度と靭性が求められる場合は球状化黒鉛鋳鉄や可鍛鋳鉄を選び、優れた耐摩耗性が求められる場合は白鋳鉄を選びます。

ねずみ鋳鉄の試験片製作に関するご依頼・お問い合わせは昭和製作所へ

ねずみ鋳鉄の試験片製作につきましては、昭和製作所へご相談ください。鋳鉄の切削加工は加工機に影響を与えるため、対応できる会社が限られます。昭和製作所ではご依頼内容にあわせてより良い工法で加工を行いますので、まずは一度お問い合わせください。

今回ご紹介したねずみ鋳鉄の他、金属加工や試験片製作に関するお問い合わせは、下記よりご連絡ください。

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